国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第2回)を紹介します。
高血圧を有さない男性を14.5年間追跡した研究では、非喫煙者に比べて喫煙の既往を有する者や喫煙者で有意に高血圧を罹患していたことが報告されています。また、アメリカ女性を10年間追跡した研究では、喫煙者で高血圧を罹患した割合が高く、1日に15本以上で有意に高かったと報告されています。
他にも、糖尿病やうつ病、認知機能低下との関連も報告されています。日本人を対象にした22の研究のメタ解析(複数の研究の結果を統合して高い見地から分析すること)では、喫煙者の糖尿病リスクは非喫煙者の1.4倍であることが報告されています。また、海外の複数の研究により、喫煙はうつ病のリスクを高める結果が報告されています。未成年者を対象とした6つの研究結果をプールした解析でも、喫煙によるうつ病リスクが1.7倍になることが推計されています。喫煙と認知機能低下や認知症の発症リスクとの関連はWHO(世界保健機関)がまとめています。なお、喫煙により体重減少が生じることがありますが、体重をコントロールする方法としては適切ではありません。
喫煙者が禁煙するとさまざまな疾患のリスクが低下することが知られていて、健康の維持・増進に大きな結果が期待できます。禁煙することでがんになるリスクは3分の2から2分の1程度まで低下することが期待されます。他にも禁煙2年以降に男性の脳卒中リスクが、喫煙を継続する人と比べて有意に低下するとの報告や、禁煙して10年以上経過すると糖尿病リスクが非喫煙者と同程度にまで低下するとの報告もあります。さらに、禁煙することによって認知機能低下のリスクの低下にもつながります。なお、禁煙の方法についは、厚生労働省の「禁煙支援マニュアル(第二版)」が参考になります。
新型たばこの健康影響に関するエビデンスはまだありませんが、紙巻きたばこと同様にニコチン依存を維持するリスクが存在すること、新型たばこの健康被害が紙巻きたばこの被害よりも低いとは現時点では言い切れないことを踏まえると、その健康影響に備えた対策が必要です。