新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための対策の第一は、マスクをつけることでもなく、密閉空間に入ることでもなくて、他人に近づかないことです。新型コロナウイルスは飛沫感染が主な感染ルートで、飛沫が飛び散ったところで生き残って、それに触れることでも感染します。他人が感染源であると考えると、できるだけ人は多く集うところには近づかず、近づく場合でも1m以上の距離をあけることで感染は防げることになります。
発達障害の中でも自閉症スペクトラム障害の子どもは、他人との接触が苦手で、できることなら接触しない生活を望むこともあります。しかし、それでは周囲とのコミュニケーションができなくなり、学校生活も社会生活もしにくくなり、これが社会交流の困難さを助長させることにもなります。マスクをつけているだけで他人の表情が充分に読めなくなることだけでも、交流がしにくくなっています。
自閉症スペクトラム障害の改善のためには、できるだけ接触する機会を増やし、他人と強調したり、譲り合ったりすることを身につけていくことが重要です。その機会は特別なことだけではなくて、日常的な行動の中から徐々に身につけていくことも大切になります。その大切な時期に、コロナ禍のために接触の機会が断たれるようなことになると、改善の機会が弱められる、もしくは失われることにもなりかねません。
コロナ対策のキーワードとして「日常を取り戻す」ということがあげられています。自閉症スペクトラム障害には日常こそが大切なことであるのに、その日常であるはずのことができなくなっています。感染拡大がおさまってくる収束をしたとしても完全に終わったと宣言できる終息には程遠い現実があり、グローバル化や地球温暖化によって数年に一度の感染症の感染拡大も予測されている中、継続的に日常を取り戻すことは困難と考えられています。
自閉症スペクトラム障害の改善には、これまでと同じことを繰り返す、同じことで改善ができるとの常識のままに進むのではなく、常識から脱却した新しい学習の様式が求められているのです。