コロナ対策が注意欠陥・多動性障害に影響している

発達障害の注意欠陥・多動性障害は、自律神経の分類からすると興奮系の交感神経のほうが強く働いていて、抑制系の副交感神経の働きが低くなっています。そのような状態であるのに、教育現場でも社会環境でも抑制的に振る舞うことが求められます。欧米の場合には抑制的と言っても、“どちらかといったら”といった社会的な雰囲気があるのに対して、日本では完全に近いほど抑制することが求められてきました。
注意欠陥・多動性障害は、教室でじっとして教師の話を聞く、課題に集中するといったことを継続するのが困難で、動きたい衝動を抑えられないことがあります。これを抑えることは、動きたい衝動を高めることになり、「我慢をしていれば抑えられるようになる」「だんだんと我慢ができるようになる」といった周囲に期待的観測とは異なる結果となりがちです。
新型コロナウイルス感染防止のための対策は、他人との接触を断つことで、3密(密着、密接、密閉)を回避して、それでも飛散して体内に入り込もうとするウイルスを防ぐためにマスクの着用は必須とされています。マスクは息苦しくてつけていられない、マスクの感触が気になって集中できない、マスク越しではクラスメイトや教師などの症状が読み取れないので不安、といったことがあります。それよりもマスク着用を強制されること自体が精神的な負担になり、そんな教室から逃げ出したいという感情を高ぶらせることになります。
注意欠陥・多動性障害は動きたいときには、自由に動けるようにしてあげることで衝動を発散させて、元の状態に戻ることもできます。しかし、新型コロナウイルスが感染拡大している中では、ウロウロと歩き回るようなこと自体が危険な行為とされることから、以前よりも強く抑制されることになります。そして、無理に抑制されることが改善とは逆効果になることも多いだけに、従来の環境と考え方では対応できない状況になっているのです。