学習障害はわかるまで時間がかかる

学習障害は識字障害、書字障害、算数障害が主な特徴とされ、文字が読めない、文字が書けない、計算ができないという困難さが指摘されています。このことだけを聞くと、まったく文字が読めない、書けないというようにも思われがちですが、そのような状態ではありません。文字は読めるのだけれど、文字の形を把握して、その文字が何を意味するのかを思い出し、その文字を言葉にするという一連の流れに時間がかかるのが識字障害とされることの特徴です。時間さえかければ読めるのに、制限時間を設けて、周囲と同じ時間で同じ結果を求めるから“読めない”と判断されてしまうのです。
文字を読むのに時間がかかれば、それを書くことにも時間がかかり、そのために書字障害とされてしまうこともあります。時間内に間に合わせようとして慌てて書くことで乱れた文字になるのも当然のことです。算数障害とされる場合も、計算ができないわけではないのに、それを文章問題として出されると、文章を理解するまでに時間がかかることから、これも算数障害とされてしまうことも少なくありません。学習の能力はあるのに、処理能力が遅いだけというのが学習障害の多くにみられることで、これが正確性を欠く要因にもなっています。
処理能力ということでは、以前のコンピュータは処理速度が遅かったのが、今では記憶容量の拡大によって驚くほどの速さになりました。その速度に合わせて業務内容と処理の速度を決めているのが普通のことですが、そこに以前の処理速度のコンピュータが1台設置されているとします。そのコンピュータを使わないで済むということなら、コンピュータを操作する全員の作業効率を同じように考えることができます。
しかし、その処理能力が遅いコンピュータは他にはない優れた能力があり、他のコンピュータで変わることができないとしたら、作業効率で業務内容を判断することはできなくなります。その処理能力は遅いものの、他にはない素晴らしい結果を出してくれるのが学習障害ということです。
学習障害がある人を従来の仕事に当てはめようとするのではなく、その人にしかできないことを見出し、その仕事を全体業務の中に入れて、そして会社全体の業績につなげるという姿勢が重要となります。そのためには、学習障害がある人に対して、他の人と比べて遅れていることを補おうとするだけでなく、優れた能力を発見するように着目して寄り添い、能力が発揮できるようにサポートする体制が必要になるということです。