学習障害は、理解ができないのではなくて、理解をするまでに時間がかかる状態が多くみられるということを前に説明しました。学習障害の困難さとしては、識字障害、書字障害、算数障害が主なものとしてあげられています。学校で学ぶ初期段階では読む、書く、計算するという3つの要素は、自力で学んでいくことによって能力を身につけていくことが求められます。
基礎的なことを学んだ後には、小学校にもタブレット端末が導入されるというデジタル化の流れもあって、こういったツールを活用して、さらに能力を発揮させていくことになります。デジタルツールを使うようになると、その情報リテラシーによって得られる結果が広がっていきます。それならば、学習障害で学びに困難さがあるなら、それを支援するテクノロジーを活用したいと考えるようになるのは今の時代には当然のことといえます。
文字を書くという作業は、キーボードで読みを打ち込めば、それに合致した文字や漢字が候補として出てくるので、これを思い出すまでに時間がかかっていた識字障害の困難さは一気に解決されることになります。候補の中から、自分が目指していた文字などを選択するには、それぞれの意味を知っていなければなりません。そこで、漢字の教育では一つひとつの漢字を覚えるという作業とともに、同音異義語(機械、機会、器械など)を覚えることが求められます。ここが理解できないのでは学習障害でよく指摘される、正確さを欠くという状態になります。
算数障害は電卓やパソコン、スマホのアプリといったルールを使うことで解決される部分もあります。ところが、識字障害となると読む代わりができるツールは一般的なものはまだ開発されていません。現状では教室の授業を補うソフトや読み上げなどの電子書籍の段階です。読むことが書くことにつながり、また読むことが計算することにつながるため、読むためのテクノロジーではなくて、読めるようにするためのテクノロジーとしての教育ツールが求められています。こういった教育ツールの開発に関わることも、学習障害を支援する団体や企業に求められているのです。