学習障害は本当に学習の障害なのか

障害者は「障がい者」と表記される場合があります。害という漢字は害を与えるというマイナスのイメージがあることから障がいという表記が一部自治体で使用されています。内閣府も文部科学省も障害を正式な用語としています。内閣府の資料では、障がいを用いているのは8道県(北海道、山形県、福島県、岐阜県、三重県、熊本県、大分県、宮崎県)と5指定都市(札幌市、新潟市、浜松市、神戸市、福岡市)と紹介されています。放送用語でも常用漢字ということで害が使われています。障害という言葉は、障害がある本人ではなく、その人が暮らしにくい社会や施設のほうに問題があるから障害になっているという考えがあり、NHKも同様の見解を示しています。
発達障害は医学用語であり、法律用語(発達障害者支援法)でもあることから障害の文字が使われています。発達障害の中でも、特に障害という用語に抵抗感があるのは、学習障害です。学習障害は英語ではLearning Disabilitiesといい、これを和訳したときに学習障害という用語が使われました。しかし、これは適切な表現ではないとして、英語表記を略したLDが使われる場合が多くみられます。LDは学習に関する能力の限定的な障害であることから、その障害の克服を手助けしていくことができれば、健常児と同じように知的な能力を発揮できるという考え方がされています。
LDは医学用語としても使用されていますが、この原型の英語はLearning Disorderで、識字障害、書字障害、算数(計算)障害に限定された診断で用いられています。
教育の世界で使われるLDのDisabilitiesは複数形になっていて、単数形はDisabilityです。これが意味するのは、発達障害は特徴的な状態だけでなく、さまざまな学習上の困難さがあることを示しています。しかし、医療関係者の定義に従って、保護者は学習上の困難があり、特別な配慮を必要とすることに目が奪われがちです。
実際に発達障害がある子どもに学習支援を行うときには、学ぶことに関わる多方面からのアプローチが必要であり、識字障害、書字障害、算数障害に限定した遅れを取り戻すだけの教育では、本来の能力を引き出すことは、それこそ困難であると考えています。