健康寿命延伸のための提言25 提言のエビデンス3食事3

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第3回)を紹介します。
食物繊維を多く含む食生活は、これまでに早死や大腸がん、循環器病、糖尿病の予防につながる可能性が示されています。食物繊維摂取と死亡全体、がんや循環器病死亡との関連を検討した日本人のコホート研究では、食物繊維を多く摂取する群で男女の死亡全体と循環器病死亡、男性のがん死亡のリスクが低下することが示されています。大腸がんについては、食物繊維の摂取量に応じて5群に分け、さらに最も摂取量の少ない群を3群に分けた場合に、食物繊維の摂取量が最少の群は最も摂取量の多い群に比べて、大腸がんのリスクが2.3倍に増加することが報告されています。
世界各国の12の前向き研究のメタ解析では、全粒穀物(玄米や全粒粉パンなどの未精製穀物)の1日あたりの摂取量が30g多くなるにつれて糖尿病リスクが0.9倍になること、穀類由来の食物繊維の摂取量が10g多くなるにつれてリスクが0.8倍になることが示されています。循環器病については、食物繊維摂取量が最も少ない群(下位20%)において、女性の循環器病発症リスクが0.7倍だったという報告があります。また、この研究では、男女ともに最も食物繊維摂取量が少ない群に比較して、食物繊維摂取量の多い非喫煙群は循環器病発症のリスクが低下していましたが、食物繊維の摂取量が多い喫煙群では循環器病発症のリスクは低下していませんでした。つまり、食物繊維を多く摂ることは、循環器病予防につながるものの、喫煙によって予防効果が期待できなくなると考えられています。
日本では厚生労働省の「健康日本21(第二次)」で1日あたり野菜摂取目標量が350g以上とされていて、食事バランスガイドによる1日の摂取量では、野菜などの副菜を350〜420g、果物を200g摂ることが適量とされています。また、1日あたりの食物繊維摂取量の目標量については、「日本人の食事摂取基準」(2020年版)」では18〜64歳では男性が21g以上、女性が18g以上、65歳以上では男性が20g以上、女性が17g以上とされています。