いまだに1日1万歩が健康によいと思われている

健康づくりにウォーキングが効果的であることは以前から知られていましたが、長らく歩行数と健康効果について目標が示されることはありませんでした。歩数計のことを“万歩計”と呼んでいる人もいますが、万歩計は山佐時計計器の登録商標で、前の東京オリンピック(1964年)のときに1日1万歩を目指そうという健康運動があり、それにちなんで名付けられました。これは公式な目標ではなくて、スローガンのようなものです。
公式な目標は、厚生労働省による国民的な健康づくり対策の「健康日本21」の中で示されています。「健康日本21」は、1996年(平成8年)に生活習慣病の概念が提唱されたことを受けて2000年(平成12年)の第三次国民健康づくり対策として始まりました。「健康日本21」は実施期間を10年間(2000年から2009年)として、生活習慣病の一次予防と健康寿命の延伸を目標に、身体活動・運動を含む9つの領域で初めて数値目標が示されました。
健康意識の高まりから一時期、歩行数は増えたものの、「健康日本21」を始める段階では、男性が約8000歩、女性が約7000歩となっていました。広く知られている1日1万歩を目指して2000〜3000歩を増やすのは現実的ではないとして、現状より1000歩を増やす目標が示されました。国民的な健康運動ということで目標の達成が期待されていましたが、2005年(平成17年)の中間評価では歩数は目標には届かない状況が確認されました。
そこで新たな生活習慣病対策としてメタボリックシンドローム対策が目標とされ、同年に「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」の健康増進標語が打ち出され、健康づくりの施策で運動が初めてトップに掲げられました。10年が経過した最終評価では、歩数は1000歩を増やす目標に反して800歩ほど減る結果となりました。
これを受けて実施された「健康日本21」(第二次)(2013年から10年間)では、20〜64歳は現状(2010年)の男性7841歩、女性6883歩、65歳以上は男性5628歩、女性4585歩から、10年後の2022年には20〜64歳は男性9000歩、女性8500歩、65歳以上は男性7000歩、女性6000歩が目標として示されています。現状よりも1200〜1500歩を増やすことが目的として掲げられたわけです。
今は継続中ということで、どのような結果になるのか、できることなら増えていてほしいと願って結果を心待ちにしているところです。