健康寿命延伸のための提言27 提言のエビデンス3食事5

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第5回)を紹介します。
魚を多く食べると血液がサラサラになり、循環器病の予防につながると言われています。魚介類はアミノ酸のバランスがよい良質なたんぱく質や、健康によいと考えられるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。また、微量栄養素の摂取源でもあって、健康的な食生活によって欠かせない食品となっています。
魚を多く摂取することと、さまざまな疾患との予防的関連が指摘されています。メタ解析から、魚を週に100g多く摂取すると、虚血性心疾患の発症リスクが5%低くなることが報告されています。また、魚を多く摂取することによって脳卒中のリスクが低下するというメタ解析もあります。日本人の脂質異常症患者に対して、EPAを1日に1.8g投与すると、虚血性心疾患の発症リスクが約20%低下することが報告されています。
魚介類の摂取によって女性は妊娠しやすくなる可能性が報告されています。魚介類やn-3脂肪酸の摂取によって早産、妊娠高血圧症候群のリスクが低下し、生まれた子どものアレルギー性疾患のリスクが低下する可能性が示されています。
魚介類のデメリットとしては自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積することがあげられていて、日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来となっています。水銀に関する研究報告では、低濃度の水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告がされていることから、厚生労働省から注意喚起がなされています。妊婦以外では水銀による健康への悪影響が一般に懸念される報告はないため、健康に有益である魚介類をバランスよく摂取することが大切です。