1日の歩数目標は8000歩でよいのか

健康づくりに役立つ1日の歩数は1万歩という一般的な常識は、今では8000歩に変わってきていますが、ただ歩数を2000歩減らせばよいということではありません。8000歩の内訳が重要になります。この8000歩という歩数が“一人歩き”するようになったきっかけは、運動と健康寿命延伸の研究として始められた「中之条研究」の成果です。
この研究は群馬県中之条町で実施された65歳以上の全住民である5000人(重度の認知症や寝たきりの人を除く)を対象に2000年(平成12年)から10年以上にわたって実施された健康研究で、研究の結果、歩数としては1日に8000歩以上歩くこと、そして中強度の歩行を20分間以上取り入れることが提言されています。中強度の歩行は、なんとか会話ができる程度の早歩きを指しています。
ただ歩くのではなく、中強度の歩行によって血流を高めることが健康効果を高め、負担をかけすぎない運動量とされています。そのような運動量の確保には早歩きのほかに坂道歩行や負荷歩行(荷物を背負った歩行)のほか、無酸素領域に達するアクティブウォーキングが適しています。
中之条研究では1日の平均歩行数と、そのうちの中強度の活動時間によって、予防できる病気を示しています。歩行数と中強度活動時間が増すごとに有病率が低くなることが判明していますが、1万2000歩(うち中強度の活動が40分)以上の運動は健康を害する可能性があることを示しています。
ウォーキングは有酸素運動によって全身の血流が促進され、脳の血流が高まることが知られています。アルツハイマー病発症に対する危険因子で最も影響度が高いのは「身体的不活動」、いわゆる運動不足で、うつや肥満、喫煙を大きく上回っています。
中之条研究では、1日に7000歩以上、中強度活動時間15分以上のグループでは認知症がいなかったと報告されています。海外の研究では、認知症の予防には脳トレーニングよりもウォーキングを中心とした運動のほうが効果があるとの研究成果があります。