学習障害100 個人に合った方法でほめる・励ます

発達障害は、それぞれの子どもの違いを認めて、それを伸ばすことが大切だと説明されています。特性の凹凸の凹を埋めることよりも、凸を伸ばすことが重要だということで、克服したときに、すぐにほめる、少しテンションを高めにしてほめるといったことがすすめられることがあります。それは多くの子どもたちと接してきて、うまくいった親の成功体験に基づくもので、そのことを成功体験として受け入れてくれる子どもばかりとは限らないということがあげられます。
学習障害は、文字が読めない、文字が書けない、計算ができないという困難さがあり、一つひとつクリアしていく小さなハードルが無数に並んでいるような状態です。たった一つであっても超えたことを喜んであげて、リアクションを示すことで、子どもの喜びを高めて、次に取り組む意欲を高めるというのは教育の一つの手法です。
ほめることがいけないと言っているわけではなくて、ほめる言葉の中に、親の本音が含まれていて、それを子どもが感じ取るようなことになると、ほめる行為に拒否反応がみられることがあります。周囲の出来事を過敏に反応する子どもの場合には、特に拒否、拒絶の反応が強く現れやすくて、例えば「もっと早くできるようになろうね」という言葉は、ほめているのではなくて、遅いことを指摘されている、それを責められているというように感じてしまいがちです。
今、行動に移そうとしていたときに、それを指摘されると、大人でも「今、やろうとしていたのに」と反発の気持ちが出てきます。学習障害は、できないのではなくて、一つの小さなハードルを越えるのに時間がかかる、見て、感じて、反応をして、行動を起こすのに時間がかかる、その行動もシステマティックにできるわけではなくて、一つひとつの手順を踏んで進めていかないと達成できないということがあります。それを根気よく待ち続けるのが学習障害に対する正しい反応であると考えます。
できたことに対しては、もっと頑張らせようと励ましの言葉を投げかけがちです。しかし、その励ましに心がこもっているのか、根拠がある励ましなのかということにも過敏に反応するのが学習障害がある子どもたちにみられることです。少なくとも根拠のない励まし、ただ「頑張れ」「やればできる」というような言葉は避けるべきです。