発達栄養学102 エネルギー代謝は燃えているわけではない

人間が生命を維持するためには、体内でエネルギーを作り出すことが必要です。そのエネルギーを作り出しているのは、全身に60兆以上もある、それぞれの細胞です。細胞の中で作り出されたエネルギーは、その細胞の中でしか使われません。電気のように流れていって、他の細胞で使うということはできない、いわば“地産地消”のような形となっています。
細胞の中ではエネルギーを使って、それぞれの細胞に必要な化学反応が起こっています。この化学反応は、生体の中で起こっているということで“生化学反応”と呼ばれています。
エネルギー代謝は材料となるエネルギー源は糖質、脂質、たんぱく質だけで、これは三大エネルギー源と呼ばれています。“三大”という表現は、三つだけということもあれば三つ以上ある中で三つを選んだということもありますが、エネルギー源の場合は3種類だけで、他のものはエネルギー源となることができません。
主なエネルギー源は糖質と脂質で、たんぱく質は身体を構成する重要な成分であるので、糖質と脂質が不足した場合にだけ使われます。脂肪の代謝については“燃焼”という言葉が使われることがあります。運動やダイエットのときに使われがちですが、体内で脂肪が燃えるようなことはありません。脂肪の燃焼には、発火しやすい植物油でも370〜400℃の温度が必要です。燃えやすい紙でも290℃の温度が必要です。
体内の温度は36.5〜37.5℃です。これは深部温度(内部の温度)で、体温計で測定している皮膚温度は放熱のために少し低くなっています。体温計は42℃までしか測定することはできません。その理由ですが、人間は42℃を超えると、たんぱく質が変質して生命維持ができなくなるからです。少なくとも、脂肪が燃焼するほどに温度が高まることはないのです。
実際に体内で起こっているのは、細胞の中での生化学反応によって、エネルギー物質が発生して、これが変化するときにエネルギーが発生しています。これを代謝と呼び、エネルギーを作り出すときの代謝なので、エネルギー代謝と呼ばれています。