国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第10回)を紹介します。
乳製品について、メタ解析では、1日あたり牛乳1本(200ml)の摂取で循環器病のリスクが0.9倍に、1日あたり低脂肪乳1本(200ml)の摂取で心疾患のリスクが0.9倍に、それぞれ低下することが報告されています。日本人にとって乳製品は、飽和脂肪酸のみでなく、カルシウムの主要な摂取源ですが、日本人のコホート研究では、乳製品由来のカルシウムの摂取が多いほど脳卒中や脳梗塞の発症、死亡リスクが低下すると報告されています。
子どもでは、無脂肪乳・低脂肪乳のほうがよいかについてのエビデンスは充分にはありません。北米では小児(2歳まで)は全乳を、2歳以上では無脂肪乳・低脂肪乳を摂取することが推奨されています。一方で、2歳以上でも全乳を摂取したほうが血中ビタミンD濃度は高く、肥満率が低いことが報告されています。
たんぱく質の健康影響に関心が高まっている一方で、たんぱく質には動物性と植物性があり、健康への影響には違いがあります。アメリカの医療従事者を対象としたコホート研究から、循環器病の死亡リスクは動物性たんぱく質の多量摂取では増加しますが、植物性たんぱく質の多量摂取では低下するという逆の関連が報告されています。
日本人を対象としたコホートの長期追跡で、たんぱく質の摂取の死亡への影響をみた研究では、摂取総エネルギーで調整後の総たんぱく質と動物性たんぱく質については、摂取割合の多少による死亡リスクとの関係はなかったと報告されています。一方、同様に、植物性たんぱく質では摂取割合が多いほど死亡リスクが低下することが報告されています。これを死因別にみると、総循環器病死亡、心疾患死亡、脳血管死亡では死亡リスクの低下がみられましたが、がん死亡には関連がなかったことが示されています。さらに、総エネルギーに対する3%の赤肉・加工肉由来のたんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えると、死亡全体のリスクが34%、がん死亡リスクが39%、循環器病死亡リスクが42%低下し、同様に、赤肉を魚介類由来のたんぱく質に置き換えても、死亡全体のリスクが25%、がん死亡リスクが33%、循環器病死亡リスクが33%低下することが示されています。
日本の研究で、動物性たんぱく質の摂取が多くてもリスクの増加がみられなかった理由としては、欧米と比較して日本では、エネルギー摂取量に対する動物性たんぱく質の摂取量の割合が低いことや、動物性たんぱく質の主な摂取源が、欧米では赤肉・加工肉であるのに対して、日本人では魚介類が多いことが考えられています。