発達栄養学105 脳の唯一のブドウ糖は不足させられない

飲食によって摂取したブドウ糖のうちエネルギー代謝に用いられなかったものの大半は、肝臓でグリコーゲンに合成されて、筋肉と肝臓に貯蔵されます。血液中のブドウ糖が減ってきたときには、グリコーゲンが分解されてブドウ糖になり、全身の細胞で使われるようになります。ブドウ糖は全身の重要なエネルギー源であり、不足させることができないからです。グリコーゲンから分解されたブドウ糖があれば健康面では特に影響がないようにも思われがちですが、一つだけ例外があり、脳細胞はグリコーゲンから変化したブドウ糖を充分に取り込むことができません。
食事によって脳細胞に取り込まれたブドウ糖の保持時間は15時間ほどとなっています。夕方の19時までに夕食を終えると、翌日の朝食までは12時間ほどの空腹時間で、この段階でブドウ糖を補えば脳細胞のエネルギー源が不足することはありません。しかし、朝食を抜くようなことになると、昼食までは17時間もあくことになり、2時間ほどはブドウ糖が不足します。ブドウ糖は急になくなるようなことはなくて、少なくなってくると節約状態になって、次の食事まで機能を低下させて長引かせるようになります。
このために昼食前の2時間ほどは集中できない、勉強がはかどらないということが起こりますが、脳は全身の働きを調整している器官です。1日に2時間の機能低下が長期間続くことによって、全身に影響が出ることが懸念されます。発達障害の人は、脳への負荷が強く、多くのエネルギーが必要となるだけに、ブドウ糖を不足させるようなことは避けなければなりません。
ただし、発達障害児に過剰なブドウ糖を与えることは逆効果を生み出すことにもなりかねません。5歳までの甘味飲料の摂取量が多いほど、将来の肥満のリスクが増加することが小規模な観察研究によって報告されています。甘味飲料にはブドウ糖が多く含まれているので、多量の摂取によって、肝臓で多くの脂肪が合成される結果となります。このほかに、20の研究メタ解析から、子どもの人工甘味料の摂取が多いほど肥満になりやすいこともわかっています。
また、小児期の甘味飲料の摂取によって注意欠陥・多動症リスクが増加すると報告されています。ブドウ糖を過剰に摂取すると膵臓からインスリンが急激に分泌され、そのために一時的に血糖値が下がり、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖の不足が脳の機能に影響を与えると考えられています。