算数障害の改善のために計算の単位を説明していて、教えるほうが戸惑ってしまう、ということを聞くことがあります。%(パーセント)は百分率で、1%は100分の1となり、これは世界共通の割合です。ところが割合を示す言葉として、日本では割(わり)が使われ、これは10分の1の歩合となっています。割の10分の1は分(ぶ)で、分の10分の1は厘(りん)です。
戸惑ってしまうのは「九分九厘」という言葉です。ほぼ確実、ほとんど完全という意味で使われていますが、百分率でいうと9.9%ということになります。野球の打率を表すときには3割2分5厘というように割の下の分、厘となっているので、これに従うなら九分九厘は9.9%です。わずか9.9%の確率なのに、ほぼ確実ということは言えないわけです。
なんだかお笑いのネタのような感じですが、九分九厘は十分に1厘だけ足りないことを指しています。この場合の十分は「じゅうぶ」とよみ、「じゅっぷん」でも「じゅうぶん」でもありません。同じ文字で読み方が違う異音意義の存在が、日本語をややこしくさせて、これば学習障害の識字障害に拍車をかけることにもなります。
九分九厘の正しい意味は「九割九分」です。これは日本で伝統的に使われてきた尺貫法と関係しています。(尺貫法については前回、前々回で紹介しました)
尺(しゃく)の下の単位は寸(すん)ですが、その下の単位として分、厘が設けられていて、さらに下には毛(もう)があります。野球の打率でも詳細単位として毛が登場します。1寸が基本(100%)となり、その10分の1が分、さらに10分の1が厘であったので、この表現法では九分九厘は99%ということになります。99%の確率であれば、ほぼ確実という意味で使われるわけです。