健康寿命延伸のための提言51 提言のエビデンス7感染症5

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第5回)を紹介します。
高齢者に対するインフルエンザワクチン接種により、インフルエンザによる肺炎やインフルエンザによる入院・死亡リスクが低くなることが報告されています。近年、高齢化に伴い、肺炎死亡数が増加し、肺炎は死因の第3位を占めています。高齢者は基礎疾患をもち、医療機関への入所も増加するため、肺炎が重症化しやすく、肺炎予防は重要です。日本人を対象とした研究で、ワクチン接種による肺炎の予防効果や経済効果がみられています。大規模コホート研究では、65歳以上の慢性疾患を有する対象者に対して、インフルエンザと肺炎球菌ワクチンを併用することにより、肺炎、脳卒中、虚血性心疾患、入院、死亡のリスクが低下することが示されています。
「成人肺炎診療ガイドライン2017」ではインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種の有効性についてシステマティックレビューが実施され、死亡と肺炎発症抑制に有効であることから両ワクチンの接種が強く推奨されています。インフルエンザワクチンは毎年秋に1回、肺炎球菌ワクチンは65歳以降に1回接種することが推奨されています。また、インフルエンザと肺炎以外にも、高齢者では60万人が毎年帯状疱疹に罹患し、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を経験すると推定されています。帯状疱疹はどの年齢でも発症しますが、50歳以降になると発症頻度が増加し、帯状疱疹自体は完治しても、その後、一部の人々は神経痛に苦しみ、高齢者の日常生活活動を低下させることから、特に高齢者において注意すべき疾患です。ワクチンによる帯状疱疹の予防に関しては、高齢者を対象とした国内外の研究で、その効果が明らかになっており、2016年に50歳以上の帯状疱疹予防ワクチンが承認され、ワクチン接種が可能となりました。
なお、帯状疱疹のワクチン接種については、自治体により費用補助などが異なる場合があるため、それぞれの状況に応じて無理のない対応が推奨されます。