学習障害は、読む、書く、計算するという3つの学習の基本的な機能の発達が遅れていて、理解はできるものの、実践もできるものの時間がかかって、定められた時間内に答えが出せないことから、不正解とされてしまうことが多くみられます。計算がうまくいかない算数障害では計算はできるのに、文章題では理解に時間がかかって時間切れになることもあります。応用編が苦手ではあっても、応用することが生活に直結することで、感覚的に把握しやすいことであれば理解も早く、そして実生活での応用も可能になります。
生活に必要な計算というと、まず思い浮かべるのはお金の使い方です。商店に数多く並んでいる商品の中からほしいものを探して、その中から手持ちの金額で買うことができるものを分類します。ここまでは計算の段階ではありません。価格が消費税込みで198円だったら、100円玉1枚、50円玉1枚、10円玉4枚、5円玉1枚、1円玉3枚を出せば買えるわけで、それだけのコインを財布から出します。
もちろん、お釣りをもらってもよいわけで、100円玉を2枚出して、2円のお釣りを受け取ります。その計算ができていれば1円玉が2枚出されても驚かずに反応できます。198円なら、お釣りは2円というのはわかりやすいことです。ところが、500円玉、1000円札、5000円札、1万円札となると、出されたお釣りが正しいのかどうか、わからなくなってしまうという子どもいます。
こういったことを、お金という身近なものを使ったとしても、例題と感じているうちは、なかなか身につくところまではいきません。金銭の出し入れの計算がわからなくても、電卓さえあれば、スマホの計算アプリさえあれば問題なくこなすことができます。しかし、実際の商売の場で、いちいちツールを使っていたら時間がかかり、お客様を待たせることになります。お釣りを間違えて、少なく渡してしまうということを防ぐつもりであっても、現実社会ではできないことです。
“お店屋さんごっこ”でお金と商品の交換を体験させることを発達改善の教育として行っているところもありますが、“ごっこ”では厳しさが違います。そこで責任を持ってお金の計算がわかるように、実際のお客さんを相手に駄菓子の販売をするということを実践して成果をあげている教育団体があります。