食品表示を見ると、袋や箱の中に入っている商品の重量が表示されている場合と、100gあたりの表示がされている場合とがあります。食品表示はエネルギー量、糖質、脂質、たんぱく質、塩分の記載が義務づけられています。義務づけられている食品表示の他に重要な栄養成分についても実際の含有量と、100gあたりに含まれる含有量が示されていることがあります。
それを見て、実際の含有量よりも多く含まれているように思い込んでしまう、というか勘違いさせるようにしているのではないか、と思ってしまうこともあります。実際の重量が60gであれば0.6をかければわかるわけですが、これは十進法で表示されているからです。もしも100gあたりではなくて、80gあたりで表示されていたら、計算しにくくなり、間違いを起こしてしまうかもしれません。
重量なら目で見て、感覚的にも捉えやすいのですが、これがエネルギー量となると80が基準になると、やはりわかりにくくなります。エネルギー量は1単位という言葉が使われていて、1単位のエネルギー量は80kcalとなっています。なぜ、こんなわかりにくいものが使われているかというと、きっかけは終戦後(今から75年前の第二次世界大戦のあと)の食糧難です。肥料も飼料も足りず、食品の切り身も小さくなって、1食あたりで食べられる食品のエネルギー量が80kcal前後になっていたからです。
そのため、戦後の緊急事態の対応として、80kcalを基本とすることが提案され、80が感覚的にわかりにくいので、単位という十進法が取り入れられました。これが栄養教育に取り入れられ、糖尿病や脂質異常症(当時は高脂血症)は低エネルギーが重要であることから、糖尿病をはじめとした学会にも採用されました。
今では1食あたりの食品のエネルギー量は100kcal前後になっています。それでも歴史的に続けられてきた1単位80kcalは、いわば常識として伝えられています。100kcalを単位(わかりやすいので単位という言葉も必要ない)とする方法は日本メディカルダイエット支援機構も採用していますが、常識とされているのは80kcalのほうなので、計算がしにくいといわずに今は数字の感覚を身につけることを考えるしかないということを伝えさせてもらっています。