健康寿命延伸のための提言53 提言のエビデンス8健診・検診の受診と口腔ケア2

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第2回)を紹介します。
歯周病有所見者は、そうでない人と比べて循環器病を1.5〜2.8倍発症しやすいことが報告されています。頸動脈硬化症の程度が、歯周病や咀嚼能力と関連することがわかってきました。歯周病菌やその菌体成分が、直接、血管に障害を与える作用に加え、歯周病の組織で作られる炎症性サイトカインが血流を通じて心臓や血管に移動し、血管内皮細胞やアテローム性動脈硬化部分の免疫細胞が活性化されて、プラーク形成を引き起こすと考えられています。また、感染性心内膜炎は、血液中に入った細菌が心臓の弁などに感染し、増殖する病気で、重篤な合併症を引き起こすため注意が必要です。
高齢者の咀嚼能率が低下した群では、そうでない群と比べて、1.7〜1.9倍メタボリックシンドローム有病率が高い値を示したことが報告されています。継続的な歯科定期受診により、咀嚼能率が低下しにくいと考えられています。加齢に伴う口腔機能の低下を軽減するためには継続的な歯科定期受診が有効であると報告されています。
日本人6,125人を5年間追跡した研究では、ベースライン時点で歯周ポケットが6mm以上の場合に、HbA1cが6.5%以上になるリスクが3.5倍であったことが報告されています。また、2型糖尿病では歯周治療を行うことにより血糖が改善される可能性があり、歯周治療が推奨されています。なお、糖尿病が歯周病を引き起こすという逆の方向の因果についても検証されています。例えば、日本人5,856人を対象にした研究では、ベースライン時点でのHbA1cが6.5%以上の場合に、4mm以上の歯周ポケットができるリスクが1.2倍になることが報告されています。歯周病と糖尿病には双方向性の関連があると考えられています。
妊娠中は口腔ケアが疎かになることが報告されています。歯周病は早産のリスクになることが報告されています。