牛乳が飲めない子どもが引っかかっているのは、ミルク味や色、とろみ感などだけでなく、焦げたような臭いがあることです。発達障害児にみられる感覚過敏では、この焦げたような臭いが気になり、体質的に受けつけない原因にもなっています。これを改善するには、まず家庭で飲んでいる牛乳が、どんな種類であるかを確認することです。
牛乳は殺菌が義務づけられていて、殺菌温度によって超高温殺菌、高温殺菌、低温殺菌に分類されています。一般的な牛乳は超高温殺菌が使われ、120℃以上の温度で1〜3秒間で殺菌する方法が用いられています。実際に多いのは130℃で2秒間の殺菌です。一瞬のうちに130℃まで温度を高めるわけにはいかないので、予熱として60℃ほどに温度を高めておきますが、その後は熱したパイプを通過させます。このパイプの温度が130℃というわけではなくて、このパイプを通過して出てきた牛乳が130℃になっているので、パイプの内側に触れた牛乳は、もっと温度が高くなっています。
そのため、牛乳のたんぱく質が変性して、生乳の風味が失われる、熱に弱いビタミンが破壊されるということと同時に、子どもが飲みにくくなる味の変化も起こっているのです。
高温殺菌は72℃以上で、15秒以上が殺菌条件です。これに対して、低温殺菌は63〜65℃で30分間加熱する殺菌法で、さっぱりしてコクがない感じがするものの、生乳らしい味わいがあり、これが牛乳が苦手な子どもには飲みやすくなっています。
低温殺菌牛乳は酪農が盛んなヨーロッパでは当たり前の殺菌法で、日本のように超高温殺菌が主流となっているのは不思議な感覚で捉えられています。
低温殺菌牛乳を飲んで育った子どもは、家庭では飲めても学校給食の牛乳は飲めない、外食で乳製品を使ったものが食べられないという例もあります。感覚過敏では、加工食品にしても原材料の質に過敏に反応します。そういった反応は牛乳に限ったことではなくて、なんとか栄養を取らせようとして子どもに隠して料理に使っても見抜かれるということになります。そして、隠して入れたことが精神的に引っかかって、その隠した人の料理が食べられないということにもなりかねないので、感覚過敏の味覚過敏の反応は甘くみないことが大切です。