発達栄養学130 ここで発達栄養学の総論を語る

発達栄養学は、発達障害児に特徴的にみられる食事の困難さだけでなく、子どもの発達にも広く活用できる栄養摂取について考えてもらうために、ずっと書き続けてきました。しかし、要望されることは具体的な方法、その裏付けとなる科学的な情報であったために、これまで総論的なことは触れてはきませんでした。なぜ食事が大切なのか、どのように食事を生活に取り入れていけばよいのかということについては後回しになってきたことから、ここで期間をかけて書いていくことにしました。
ここが理解的できていないと、いくら栄養摂取の重要性を訴えても、身体に備わったメカニズムを述べても、実際の行動に移してもらえないというのは、これまでに何度も見聞きしてきたことであり、講習の場でも話していることが通じないと感じてきたことです。
食事は人間が生きていくために欠かせない重要なものです。それなのに平気で抜いてしまう人がいます。朝は忙しくて時間がないから、食欲が湧かないから、ダイエットをするためには食べる量を減らさなければならないからといったことを言って食事を抜く人がいます。朝食を抜くのが成人で、自分のためだけにしていることであれば、とやかく言うことはないのかもしれません。朝食で摂らなければ栄養素が不足するとエネルギー代謝が低下する、元気が出なくなる、かえってやせにくいということを話しても、聞き入れてもらえないことがあります。
朝食を抜いている人の中には、自分だけでなく家族にも、そして子どもにも付き合わせている親もいます。体調不良や学習に集中できないという子どもを対象として朝食調査を実施したところ、子どもの都合ではなく、親の都合で食べていないことが多いことがわかりました。厳しい言い方をしなければならないと判断したときには、「食べないと死ぬ」という話をして、食べたものがエネルギーを作り出し、それが生命維持の最低条件であることを伝えるようにしています。
食事の意味を、まず真剣に考える機会を教育の場でも設けることから、始めるべきだと考えています。