日本語の正しい使い方は、何も辞書に載っていることが正しいとは限りません。そもそも辞書は、すべてが同じことを正解として掲載しているわけではなくて、全部を確認してみると、案外と違っていることがわかります。
日本語を学んだ、といっても大学で日本語学を学んだわけではなくて、ゴーストライターを続ける中で、それぞれの筆者の言葉づかいを知って、それに合わせて表現していく中で、徐々に覚えていった経験則のようなものです。
数多くの辞書を見比べてきましたが、その中で、これは面白いと思って、全ページを読み尽くしたのが「NHKことばのハンドブック」です。これはNHKの番組で読み間違えがないこと、言葉を聞けば意味することがわかることに重きを置いて編纂されたものです。
このハンドブックを活用して、文章の基準としていた出版社があります。日本文化出版で、月刊バレーボール、月刊バスケットボールなど競技団体と連携した出版をしていました。同社の仕事を手伝っていたことがあり、そこに所属していた編集者の紹介で行ったのがPHP研究所で、そこで初めて手がけた「松下政経塾塾長講和録」が日本メディカルダイエット 支援機構の理事長のゴーストライター歴184冊の初めの1冊です。
話を戻して、「NHKことばのハンドブック」を使っての編集作業の中で、今でも使い方について自問自答されている言葉が“ぎごちない”と“こんがらかる”です。「NHKことばのハンドブック」の平成4年の第1版では“ぎごちない”が第1の読みとされていましたが、平成17年の第2版では“ぎこちない”が第1の読みになり、“ぎごちない”は第2の読みとなりました。これを受ける形で、多くの辞書が“ぎこちない”を見出し語として使うようになりました。しかし、昔の使い方にこだわる立場としては“ぎごちない”が正しい言い方と考えています。
“こんがらかる”は、糸などの長いものがもつれて絡まることで、「NHKことばのハンドブック」の第2版でも“こんがらかる”が第1の読み、“こんがらがる”が第2の読みとなっています。若者の言葉を聞いていると、期間がたつにつれて“こんがらがる”が主流になってくる気配もありますが、今の段階では“こんがらかる”が正解ということです。