健康寿命延伸のための提言58 提言のエビデンス10健康の社会的決定要因2

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第2回)を紹介します。
社会経済的状況が低い場合、喫煙率が高く、禁煙しにくく、また受動喫煙に曝露されやすいことが、日本を含めて国内外で報告されています。また、世帯収入が少ない世帯は多い世帯と比べて、野菜・果物類や魚介類など生鮮食品の摂取が少なく、穀物の摂取が多いことが国民健康・栄養調査で報告されています。アルコールに関連する死亡が、社会経済的状況が低い群で特に多いことを示したメタ解析もありますが、日本における研究でははっきりした結論が得られていません。
社会経済的状況による健康格差を説明する重要な経路の1つとして考えられているのが、慢性的な真理社会的ストレスです。不安定な経済状況や社会的な孤立などが長期間持続すると、ストレスにより免疫系の恒常性が破綻し、さまざまな疾患の発生につながると考えられています。喫煙などの不適切なストレス対処行動による影響も考えられています。雇用形態による心理ストレスの違いや、社会経済状況と睡眠の質との関連が報告されています。
地域の社会的環境と、そこに居住する住民の健康との関連は数多く報告されています。例えば、世界の9つのコホート研究(59,509,857人)のデータを統合して地域の収入格差の指標(ジニ係数)と死亡率の関連を検討した研究では収入格差が大きな地域に居住していると死亡するリスクが高くなることが報告されています。