自衛隊の給食について厨房機器を通じて知ったことに続いて、実際に内容を知ることになったきっかけは、後に統合幕僚会議議長(現在は統合幕僚長)になる海上自衛隊の幹部の方と知り合ったことでした。その方の所属は海上自衛隊で、艦船と哨戒機が専門分野でした。海の上で一緒に生活をするうえでは、同じ生活をして、同じものを食べるということが結束力を高めるために重要という話を聞き、いかに給食が重要であるかということも聞きました。
その方は若いときには哨戒機のパイロットでしたが、同じ飛行機でも航空自衛隊の戦闘機とは待遇が大違いとの話でした。哨戒機のパイロットは、他の海上自衛隊と食べるものの、摂取エネルギー量も変わりがないのに対して、航空自衛隊ではパイロットは摂取エネルギー量が多く、中でも緊急発進があるパイロットはトンカツが1人前分は多くなっていました。それだけ負荷がかかり、多くのエネルギーが必要な仕事だということです。
厨房機器の仕事から、給食雑誌の仕事に移っていたときのこと、お盆の帰省客を多く乗せた日航機が群馬県の山中に墜落するという大事故がありました。これは給食という特殊な世界の取材先ではないと思っていたのですが、自衛隊と警察の緊急現場の給食の取材ということで山の上まで行くことになりました。自衛隊の食事は自前が原則で、悲惨な現場でも自ら食事を作っていました。警察のほうは地元の給食センターに発注していました。自衛官は絶対に必要な栄養素を摂るために、乗客・乗員のほとんどが亡くなった現場でも肉を食べていました。ところが、警察官は、とても肉が食べられるような状況ではない、でもエネルギーが必要ということで献立に苦労した話を取材しました。
そのときに、現場仕事によって摂取エネルギーが大きく異なることを知り、エネルギーの違いを実感する機会となりました。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)