発達栄養学133 子どもの塩分が多い食事の影響は生涯続く

「三つ子の魂百まで」の続きの話で、今回は塩分についてです。味覚は誕生したばかりのときからあります。それは五味のうち甘味、旨味、酸味、苦味の4つとされています。母乳をゴクゴクと飲めるのは甘味があり、唾液が混じるたんぱく質が変化して旨味になります。酸味と苦味は腐ったものや有害成分の味で、これを避けるために早く身につきます。塩味がわかるようになるのは生後3か月くらいです。塩味がわかるようになると、他の味覚も敏感になってきて、6か月くらいまでに味覚は整ってきます。
とはいっても、渋味、辛味がはっきりとわかるようになるのは1年ほどですが、これをおいしさとして感じるようになるまでには3年ほどがかかります。だから、3歳までに何を食べたのか、どんな調味料を使ったのかによって、微妙な味、組み合わされた複雑な味がわかるようになっていきます。
子どものときに塩味に慣れると、塩が多く含まれていないとおいしく感じないようになっていきます。だから、家族ごと必要以上に塩を使うようになり、また地域ごとに塩の摂取量に違いが出てきます。塩分摂取は、塩に含まれるナトリウムを多く摂ることになり、これが血圧の上昇につながります。ナトリウムの摂取量が血圧に影響を与える食塩感受性遺伝子を持っている人は日本人では約20%、ナトリウムが多くても血圧が上昇せずに逆にナトリウムを減らしても血圧が降下しない食塩非感受性の人は約50%とされています。残りの約30%は食塩と他の要因によって血圧が上昇するということです。
食塩非感受性なら塩分を多く摂っても平気なのかというと、血液中のナトリウムが多くなると血管の細胞に浸透して、細胞内のナトリウムが多くなります。ナトリウムには水分を吸着する作用があるので、細胞が膨らんで血管の内径が狭くなります。これによって自動的に血圧は上昇します。若いうちはナトリウムが多くなると腎臓から排出されるので正常な状態が保たれるのですが、年齢を重ねていくと徐々に排泄の能力が低下していきます。
年齢を重ねてから、病気になってから塩分摂取を減らすようにしようとしても、子どものころに身につけた食習慣を大人になってから改めるのは容易なことではありません。だから、子どものうちから塩分が少なくてもおいしく感じるように、例えば汁物は出汁(だし)を多く使って、食塩が少なくてもおいしく食べられる能力を身につけるようにすることが大切になるのです。