学習障害135 腸の仕組み

腸は小腸と大腸に大きく分けられます。小腸は、十二指腸、空腸、回腸から構成され、細く全長が6~7mの管で、栄養素の一部を消化するとともに、90%以上の栄養素を吸収する働きがあります。食塊(食べたものの塊)が通過する腸管内腔側には輪状ひだがあります。輪状ひだは絨毛の構造になっていて、絨毛の中には血管(動脈、静脈)、リンパ管、神経が走行しています。
食塊と接触する側の絨毛の管腔側の細胞は粘膜上皮細胞といい、ここには細胞膜が細い毛のように伸びた突起の微絨毛があります。こういった構造によって、同じ太さ、長さの管と比較すると、その表面積は輪状ひだで約3倍、絨毛で約30倍、微絨毛で約600倍にもなります。このように複合的にひだ状になっていることで食塊と接触する面積を広くし、効率的に吸収できる仕組みになっています。
小腸の表面が平らな管状だったとすると内部の表面積は約0.4㎡でしかないのに、絨毛構造の小腸の表面積は約200㎡と、テニスコート1面(約195㎡)と同じくらいの面積になっています。このような仕組みのため、低エネルギーの食事だった時代には、少しでも多くのエネルギー源を取り込むことができたものの、腸壁の面積が広いことでエネルギー源の糖質や脂質を多く取り込むことができるようになるため、食べた量に比べて血液中に入ってくる糖質や脂質の量は多くなります。
小腸の温度は37℃となっています。それと同じ温度の環境で食品を放置すると腐敗しますが、消化管で腐敗が起こらないのは、胃液がpH(酸度)1~2の強酸性となっているからで、十二指腸はpH5~6の弱酸性となっています。空腸はpH6~7の中性、回腸はpH8のアルカリ性となっています。空腸、回腸に長時間、食塊が存在していると腐敗することになるものの、空腸、回腸で消化、吸収されているため、腐敗は起こりません。
消化と吸収に関わる酵素は、弱酸性から中性のpHの中で最も働くようになっています。胃液の分泌量が多ければ、腸内のpHは消化・吸収に適した状態となりますが、胃液が少なくなり、pHが低下すると消化・吸収に影響が出るようになります。
大腸は約1.5mの長さがあり、小腸の2倍ほどの太さ(5~7㎝)があり、盲腸、結腸、直腸に分かれます。結腸は上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。大腸壁は小腸よりも薄く、輪状ひだや繊毛はみられません。
小腸で分泌される消化酵素は膵臓で作られています。膵臓は肝臓の下側にある細長い臓器で、内部にはランゲルハンス島と、これを取り囲むように腺房があります。ランゲルハンス島はホルモンを分泌する内分泌器官で、α細胞からは血糖値を上昇させるグルカゴンが、β細胞からは血糖値を下降させるインスリンが分泌されます。腺房からは消化器官に消化酵素が分泌されるため、外分泌腺と呼ばれます。つまり、膵臓は内分泌器官と外分泌器官の両方の役割があることになります。
肝臓は体重の50分の1もの大きさがある臓器で、栄養素の合成と貯蔵、解毒などの働きがあります。外分泌器官としては、胆汁を合成して十二指腸から分泌されています。胆汁には消化酵素は含まれていませんが、脂肪の消化に作用する胆汁酸が含まれています。胆汁酸はコレステロールから作られています。
吸収された糖(ブドウ糖などの単糖)は肝臓でグリコーゲンに合成されます。脂肪酸は肝臓で中性脂肪に合成されます。アミノ酸は肝臓でタンパク質に合成されます。合成後には、一部は肝臓内に貯蔵され、多くは血流に乗って、全身に運ばれていきます。