コロナ禍で営業自粛続きだった外食店は、収束となって自粛が終了になれば客足が戻ってくる、以前と同じような商売ができる、売り上げも戻ると期待するのは当然のことです。しかし、今後の感染の防止を考えると、以前と同じように大人数で飲めや歌えというわけにはいかないので、客足が戻らない店も少なくありません。それは営業形態によるだけでなく、店で飲み食いするのではなくて、自宅飲みや路上飲みする人が増えたこと、店で高いものを食べることに金を使うよりも自宅飲みで覚えた高級酒を飲むことに魅力を感じるようになった人もいます。
こうなると今までどおりの形態での営業が難しくなり、安く提供して客を増やそう、サービスの質を落としても一定の売り上げを確保しようとする店が増えるようになります。そんな店で飲み食いしても面白くないということで、滞在時間が短くなって客単価が下がり、客が他の店に流れることにもなります。安いものを提供する道を選択すると、結局は儲けが減るという「安物売りの銭失い」ともなってしまいます。
外食店の中には、来店客が減ったこと、客単価が下がったことに対応するために、テイクアウトやデリバリーを始めたところが増えて、これがデリバリーサービスの会社を増やすことにもつながりました。自粛解禁になったら、テイクアウトもデリバリーもやめて元に戻すのかと思ったら、売り上げが元に戻らないことを想定して、店舗営業のほかにテイクアウトやデリバリーを続けようとしているところもあります。
わざわざ店に行き、時間をかけて、高い金を支払うのは、店舗の雰囲気やサービスも料金に含まれているからです。テイクアウトやデリバリーの料理の料金の設定は店それぞれであってよいはずなのに、デリバリーが激戦になってからは料金が一定化してきました。テイクアウトもデリバリーも安くなる傾向があるといっても、店舗の雰囲気やサービス(サービス提供の人件費、食器やグラス、ナイフ、フォーク、テーブルクロスなど)の分を差し引いても、まだ高くなっています。店舗でのサービス料は配送料に当てたとしても、それほど利益が得られるものではないので、テイクアウトやデリバリーを続けることは苦労の割には収益につながりません。
店に行かなければ食べられなかったものを家でも食べられるということになると特別感がなくなり、どうしても店に行く足は遠のくようになります。それぞれの店舗の話ではなくて、外食業界全体のマイナスになっていきます。安くてよいものを提供しようとする頑張りが、結局は「安物がいいの銭失い」になるのではないかという思いをしています。