ネット隆盛の時代に逆らうように、情報は紙にして、つまりプリントして保存して、講習に使うテキストも紙で提供しています。アップする作業が面倒だからということではなくて、情報は“行間を読む”ことが重要で、そのために文章として読み込むことが必要だと考えているからです。行間を読むの“行間”は、文章に書かれていない書き手が本当に伝えたい隠された意図や意味合いを指しています。これを読み取ってほしいことから、わざわざ文章化しているのです。
講習などでは要点だけを伝えたい、要点だけを知ることができればよいということもあります。医学系学会の機関誌の編集を手伝っていたときに、講演会場ではスクリーンに大写しにされる図表と、講師が話したことを文章化して、参加できなかった会員にも共通の情報が提供できるようにしていました。
話を聞いているときには納得できる内容だったと思っていたのに、文章化してみると物足りない、これでは伝わりにくい、場合によっては誤った伝わり方をしてしまうということもあって、講演者に追加をお願いしたこともあります。ところが、その手間が面倒だというわけではない(だろう)のに、断ってくる方も少なくありません。講演で話した瞬間に仕事は終わったと感じているのか、それとも詳しい情報を(安い講演料で)伝えたくないという考えがあるのか、結局は“読めばわかる”という内容にすることができなかったことは一度や二度ではありません。
文章を作成する側としては、“書きながら考える”“読みながら考える”ということをしているので、同じような感覚を味わってもらいたいという思いもあります。行間が意味することがわかったときには、それが記憶に残り、のちのちに役に立つということも期待をしています。そんな紙の文章の読み物や講習テキストは、シーンが変わると役に立たないこともあります。重要な内容、面白い内容であっても、ネット情報には向かないと思って、求められてもネットにアップしないできたことも複数あります。
しかし、そのほうがネット向きだという時代になってきました。ネットの検索で上位にくるのは、検索数が多い順でもなければ、関心度が高い順でもありません。情報の重要性、社会が求めている情報が上位に上がってくるように検索システムの定義が変わってきました。すでにネットに長く掲載されている繰り返し使われた文章は、有能な検索ロボットが判断して、検索を繰り返しても上位にこないようにしています。初登場で、内容的にしっかりとしていて、裏付けもある情報が上位にくるようになりました。
そのことを教えてくれたのは、長く付き合ってきたネット関係者で、もう古くなった紙の情報として捨てようかと思っていたときに、古い情報の部分だけを最新に書き換えれば、これほど役立つものはないと言われました。その気になって、紙の情報(といってもWordやExcelのデータ)を最新情報に差し替えているところです。そして、この情報を次の世代に伝えて、活かしてもらえればと考えています。