エビデンスをもってタイアップを仕掛けるというのは、何も商品販売に限ったことではありません。健康づくりの活動そのものでも、地域の活性化の活動においてもエビデンスは重要になってきます。エビデンスなしで健康的なイメージを作り出して、雰囲気だけで攻めても、その裏付けとしてのエビデンスが欠けていると、その地域を訪れてほしい人に届かないだけでなく、来てほしい人に情報を届けてくれるメディアにも響きません。せっかくテレビ番組に取り上げられたのに通り一遍の紹介で終わってしまいます。
地方のテレビ局はネタが不足していることもあって、各局にリリースを送れば、ほぼ取材に来てくれます。NHKをはじめとして民放5局がある地域では、どこのチャンネルにしても同じ内容で取り上げられるということがあります。独自の取材ということは少なくて、取材時に提供した資料をそのまま取り上げるといったこともあるので、どんな資料を渡すのかが重要になります。そこにエビデンスがあり、健康に役立つのは当然のことと思われることが書かれてあれば、各局が頭をひねって番組や局の方向性に沿った取り上げ方もしてもらえます。
これまで地域の健康づくりの活動は報道のネタになりやすく、実際はどうあれ健康のイメージだけでも報道され、その地域に来てくれるというのは大いに期待できました。だから、広告代理店や旅行会社の言うとおりにしても集客できました。ところが、新型コロナウイルス感染拡大によって状況がゴロッと変わり、安全対策をしていても以前のようには新規集客ができず、以前に訪れた方のリピートもないという状況になってしまいました。
地域の健康イメージだけで売れる時代はコロナ禍によって終わりました。その地域は本当に健康なのか、そのエビデンスは何かを示すことが必要で、そのためには現状と可能性を徹底的にデータで分析する必要があります。そのために汗をかくのは当然のことですが、以前のように地方創生の補助金を期待して、実際に汗をかくのは下請けで、地方自治体は予算をつけて「お手並み拝見」と待っていればよい時代は終わりました。最も地域の実情を知っていて、課題もわかっている人が積極的に動かなければ物事は進みません。
といっても、外部から指摘されて、初めて地域の魅力に気づいた、それを健康づくりにつなげ、地方創生につなげていく方法も初めて知ったという自治体があるのは事実です。