サプリ概論19 抗酸化成分の変遷

活性酸素の発生メカニズムと身体に与える影響については、研究者の間では以前から知られていましたが、活性酸素について一般に広く知られるようになったのは、活性酸素を消去する作用がある抗酸化成分が明らかになってからです。そのきっかけを作ったのは、赤ワインのポリフェノールで、国立健康・栄養研究所の臨床栄養部長であった板倉弘重医学博士の研究チームがフレンチ・パラドックスの原因を明らかにしたことでした。
フレンチ・パラドックスはフランス人が肉の消費量が世界トップクラスで、飽和脂肪酸の摂取量が多いのにも関わらず、心臓病の罹患率が低いという逆説的な疫学観察のことを指しています。その原因として、フランス人の赤ワインの消費量の多さが注目され、赤ワインに含まれる色素成分のポリフェノールが関係している可能性が指摘されてから、赤ワインの消費量が大きく増えました。国内では赤ワインの消費量は前年比で45%も増えて、動脈硬化を防ごうとして赤ワインを飲む人が増えたことから、飲酒によって他の病気が増えるのではないかという心配をされるほどでした。
抗酸化成分といえば赤ワインのポリフェノールが国内の歴史の始まりとされていますが、実際にはチョコレートとココアのカカオポリフェノールの研究が先に行われ、メディアで取り上げられたのも先でした。製菓メーカーがカカオポリフェノールのPRをメディアで展開したものの、最も売れたのは海外メーカー、2位が別の国内メーカーであったことから、急に熱が冷めて、研究者の注目は別のものに移っていきました。そこに目をつけたのがヨーロッパ以外のワインの輸入を計画していた大手洋酒メーカーで、それが産地よりも赤ワインであればよいというムードづくりで、それが赤ワインブームを生み出しました。
フランスでは赤ワインよりも抗酸化作用が強いものへの研究が始まっていて、その結果として出てきたのがピクノジェノール(フラバンジェノール)でした。これはフランス海岸松の樹皮のエキスです。しかし、多くの量が取れないために、次に目がつけられたのはグレープシードオイルです。その名のとおりブドウの種子から絞られた植物油です。
これに次いで知られるようになったのは、強い日差しを浴びて色素が多く蓄積されたブルーベリー、ビルベリー、カシスなどでした。色素の濃さに限らず、抗酸化作用を数値化して調べられるようになってから、緑茶のカテキン、大豆のイソフラボン、コーヒーのクロロゲン酸、タマネギのケルセチンなど通常の商品からも発見されて、次々に新たな抗酸化サプリメントが登場することになりました。