納豆ブームに水を差した一部の抜け駆け

テレビ番組で健康をテーマにすれば必ず視聴率が稼げるという時代がありました。今から20年前に納豆の記念日(納豆の日)のイベントを展開するのと同時に、メディアや流通に毎月リリーズを送り続けたことからテレビを初めとして各メディアに納豆の話題が出ない日はないという状態になり、流通での売り上げも前年より10%も伸びるという状態でした。そのリリースを担当していたことから、テレビ番組の取材を受けるだけでなくて、番組の切り口や裏付け資料の提供、コメントの専門家の紹介、収録後の監修、表向きの監修者の先生がいるときには“裏監修”などなど、なんでもさせられていました。
こういった納豆ブームの構築に参加できたのは、納豆業界をあげての取り組みがあったからです。特定の商品は売り場が限られていることから、その中での場所の取り合い、目玉セールへの採用などライバル会社、ライバル商品との激戦の場となっていました。どうしても安売り合戦に巻き込まれてしまう“レッドオーシャン”(血で血を洗う戦い)から抜け出すのが業界の大命題でした。そこで納豆の効能効果を打ち出したPRを展開することで、高くても良質な商品なら買ってもらえる状態に押し上げ、他の定番食品よりも優位な売り場を継続確保し続けることが求められました。
テレビ番組の影響が最も大きくて、日曜日の夜の1時間番組で、納豆が苦手な人の理由に合わせた組み合わせ食材によって、番組の時間中に食べられるようにするという無茶ともいえるリクエストにも応えて、一気に納豆ブーム火をつけました。売り上げが伸びて、売り場面積も広がりました。敵がいない“ブルーオーシャン”とまではいかないものの、10%の伸びにつながっていきました。これに業界的には満足をしていたのですが、一部の会社には「自分の会社はもっと伸ばしたい」と考えるところもあって、火付け役となったテレビ番組にアプローチしました。
タイアップ番組なので、それなりの資金は必要で、納豆全体で費用の2倍ほどをかけたことから番組になりました。これについて番組側から相談を受けたときに、業界の一致した活動をしている立場から反対しました。もしも裏付けデータが間違っていたら、業界の活動に水を差すことになります。しかし、番組として1社の商品を取り上げることになり、データをチェックしてほしいとの要望はあったものの、実際には何も見せられないまま番組が始まりました。
結果として、後になってデータとコメントしたアメリカの大学教授のコメントが捏造(ねつぞう)であったことがわかり、番組の中で謝罪をしたものの、それでは済まず単独スポンサーが降りて、番組が打ち切りになりました。このことが納豆の信頼を大きく低下させることになって、納豆ブームは5年で終わることになってしまいました。業界で起こした成功例と、抜け駆けが起こした失敗例の両方を体験させてもらい、このことが以降の健康づくりの広報の戒めにもなっています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)