メディカルダイエットは、臨床栄養学、運動生理学などの研究者とエネルギー代謝の研究を進める中で理論構築していきました。理論的に正しくても、実際に目指す体重のコントロールに使えなければ意味がないので、スポーツ選手の減量で実践して成果を得てきました。減量だけでなく、競技によっては体重制限の変更から、逆に増やさなければならないこともあります。選手によっては姉妹に体重制限のクラスを譲るために大きな減量をしなければならないということもあって、食事量と運動量による調整に加えて、それぞれの選手の特性に合わせて食事と運動のタイミングを変えたり、日常生活から見直さなければならないという総合的な対応が必要になります。
それを指導どおりに着実に実施してくれるのがアスリートのよいところで、着実に体重コントロール、体脂肪コントロールすることは難しいことではなりません。ところが、減量に成功して、試合に臨んで好成績をあげたあとに、困難な減量が続くことがあります。その好例が柔道の男女混合団体戦に出場する選手の減量です。男女混合だからといことではなくて、たまたま東京オリンピックで混合戦が実施されたからで、自分の階級の試合が終わったあとに、再び減量することに苦しみ、なんとか減量はしたものの体力が続かずに個人戦のような好成績が残せなかったという結果を見たからです。
体重制限がある競技は試合の1〜2日前に計量をして、これにパスしたら、その後は体重の5%未満の範囲で増量が許されています。全員が5%未満かが確認されるわけではなくて無作為抽出となっていますが、もしも超えたことが発覚したら出場停止となるので、そこのところは厳格に守られています。柔道の男子の60キロ級の場合は、65kgまで増量してよいわけです。団体戦では男子は73キロ以下、90キロ以下、90キロ超級、女子は57キロ以下、70キロ以下、70キロ超級と分類されています。73キロ級の選手なら5%アップで76.65kgまで増やして試合に臨むことができます。
その後に団体戦があるときには、短い期間で元の体重まで36.5kgを減量します。筋肉の量を減らさずに、期間をかけて体脂肪を減らし、最後は水分も減らして減量に成功していれば、増量分は減らしやすくなっています。ところが、減量によって筋肉も減ってしまうと、体脂肪が多くなって5%増やしているので、この体脂肪を減らすのは大変です。筋肉と体脂肪の重量は筋肉のほうが20%ほど重くなっています。20%の差といっても、軽いほうの体脂肪が増えると、それだけ減らすべきものが多くなるので減量には困難が伴います。
体脂肪を減らす有酸素運動を、大事な試合の前に行って、体力を失うようなことがあってはいけないので、ただ体脂肪を減らすのではなくて、この脂肪をエネルギー代謝のために使って、エネルギーを多く作り出すメディカルダイエットの手法が必要になります。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)