体脂肪の蓄積量の変動は、食事で摂るエネルギー量と、運動など身体を動かすことによって消費されるエネルギー量のバランスだと一般には説明されています。また、摂取エネルギー量が同じであれば、同じように体脂肪が蓄積されると説明されることも多いのですが、必ずしも摂取エネルギー量と蓄積される体脂肪の量が比例するわけではありません。というのは、食事で脂肪を摂るタイミングによって蓄積される脂肪の割合が変わってくるエネルギーロスが体内には備わっているからです。
このエネルギーロスについて教えてくれたのは、慶應義塾大学病院食養科長から慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの栄養担当となった山下光雄先生でした。
食品に含まれる脂肪が体脂肪としての中性脂肪に合成されるときには、似たような構造に変換されるため、脂肪合成に使われるエネルギー量は少なく、エネルギーロス率は約3%となっていることが明らかになりました。それに対して、たんぱく質と糖質が中性脂肪に合成されるときには、異なる形に変換されるため、エネルギーロス率は糖質で約20%、たんぱく質で約23%にもなります。同じエネルギー量の食品をとっても、体脂肪として蓄積されるときには20%前後のエネルギー量の差が生まれることになります。
夕食時には、自律神経の副交感神経が盛んに働き、副交感神経によって膵臓からインスリンが多く分泌されます。インスリンは昼間には糖質を筋肉細胞に取り込み、代謝させるように作用しますが、夕方からはインスリンは糖質を脂肪に合成させると同時に、中性脂肪を脂肪細胞に多く取り込むように働きます。
これは夕食で摂ったものを、重要なエネルギー源の体脂肪として蓄えるために身体に備わった機能です。夕食では脂肪を減らした食事内容とし、脂肪は朝食と昼食で多めに摂ったほうが、体脂肪の蓄積を減らす効果が高いことになります。このメカニズムを活用して、無理なく無駄なく体脂肪のコントロールをすることに役立てています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)