学習障害159 左右が逆に見える視覚反応は対処できるのか

学習障害では“鏡文字”という言葉がよく登場します。文字の左右が逆になっているもので、見えたままを書き写すことが当たり前という子どもに鏡文字を書いてもらうと、その困難さがわかります。つまり、左右を逆転して書くというのは、特殊な技能の持ち主でなければ、なかなかできないことで、それも上手な文字で書くというのは大変なことです。
学習障害のテキストやネット情報を調べていくと、鏡文字は逆さ文字とも表現されていて、その多くは「正しく文字が見えているのに左右を逆に書くこと」と説明しています。その認識に立って、左利きのせいである、とか、左脳と右脳のバランスが取れていないために誤って書く、といった説明がされているのですが、中には正しく見えていない子どももいます。
正しく見えていないという表現は、本人以外が言う言葉であって、本人にとっては文字を鏡に写して見ているのと同じように左右が逆転して見えているのです。こういう状態で鏡文字が見えていることが理解できていないと、いくら正しい筆づかい(実際には鉛筆の動かし方)を教えても解決はできません。本人にとっては、自分の目に正しく見えている文字を逆さに書くように強制されているからです。
その困難さを理解するためには、教科書に書かれている文字を鏡に写して、その見えたとおりの逆さ文字をノートに書き写してみればわかります。空間認識が逆転しているような状態で、見て、書くということを行うと複数の文字を一度に覚えることが難しく、一文字ずつ書き写していくようになります。読むのにも時間がかかり、書くのにも時間がかかり、通常の学習の時間では時間切れになってしまいます。
そんな困難な状態で学んでいるのが、鏡文字で見えている子どもに限らず、学習障害で悩んでいる子どもたちの状況であるのです。