新型コロナウイルス感染が拡大する中で、1年半以上にわたっての自粛続きで、日本人の平均寿命を延ばし、健康寿命も延ばしてきた健康づくりの成果が“水泡に帰す”状態、つまり水の泡のように、あっけなく消え失せてしまうことにもなりかねないという強い危機感を抱いています。
繰り返し言われていることですが、外出自粛のために運動ができない、歩くことも制限される、家庭にいる時間が長くなることで食べ過ぎ・飲み過ぎで太る、健診も検診も受ける機会が減る、病気であっても急を要さないものは通院の機会が減る、マスク着用で酸素の吸入量が減る、そもそもマスク着用はストレスで、コロナ禍はストレスとの戦いであり、それに他のことが重なって常にストレスがかかり続けている……といったように、健康づくりにとってはマイナスのことばかりです。
日本人は今でこそ長寿を誇っていますが、終戦後の昭和22年に発表された平均寿命は男性が50.06歳、女性が53.96歳と初めて50歳を超えました。戦時中は統計がなく、その前は40歳代だったわけですが、昭和22年の段階でアメリカは60歳、北欧では70歳を超えていました。いわゆる先進国の中では最下位で、戦争のせいで平均寿命が短くなったわけではありません。その後、急激に平均寿命は延びて、今では世界2位ですが、一時期は世界1位の長寿を誇っていました。
何が変わったのかというと、戦前から終戦直後の日本人の死因は結核が1位で、免疫が低い国民でした。その原因としてあげられているのは食事による脂肪の不足です。血管も弱くて、脳血管疾患と心疾患(心臓病)は血管が切れて亡くなっていました。これも脂肪とコレステロールの不足によるもので、今も脳血管疾患と心疾患は多いのですが、脂肪とコレステロールが多すぎて詰まって亡くなっています。死因の統計では同じ用語であっても原因が逆になっているのです。
どちらにしても食事による脂肪とコレステロールが関係しているわけですが、血管が丈夫でないと血流が低下します。免疫細胞は血液中を流れているので、血流の低下は免疫の低下につながります。だから、血液をサラサラにする食事や健康食品を摂るといったことだけでなく、その前にすることがあります。それは免疫のアップ・ダウンに関わることが明らかにされていることを知り、ダウンさせることを減らし、アップさせることに積極的に取り組むことです。
免疫を低下させることとしては、ストレス、体の冷え(つまり血流の低下)、肥満、糖尿病をはじめとした生活習慣病があげられています。免疫を高めるものは歩くことと笑うことです。他にも高めることはあるのですが、最も簡単にできることとして例示しました。
笑うことは、心の底から笑うのではなくても、愛想笑いなど無理をして笑うことでも免疫を高めることが確認されています。まさに「笑う門には福は内」で、コロナ禍で暗くなってしまった世の中を、コロナ後には笑って過ごせるようにするために、できることには何でも取り組むようにしたいと考えています。