ポールを用いたノルディックスタイルのウォーキングは運動量が多く、通常のウォーキングに比べると全身の90%(首から下)の筋肉を活用する全身運動であるので、身体的な負荷も大きくなっています。通常のウォーキング(速歩)は3メッツの負荷ですが、ノルディック・ウォークでは5.2メッツに高まっています。メッツ(Metz)というのは運動強度の単位で、安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示しています。
運動強度が高いので、まさに“転ばぬ先の杖”で、ストレッチを中心とした入念な準備運動をします。その運動にもポールが使われます。準備運動だけではもったいないからと始められたのがポール体操で、ストレッチだけでなく、ポールを使って普段ではできない体操によって筋肉の強化を図り、立ち上がる、歩くといった基本的な動作が高齢になっても継続できるようにすることを目的としています。
ポールを支えにすれば、座った姿勢から立ち上がるのも楽で、支えがあればスクワットも楽に続けられます。ストレッチも足を前後に伸ばして、体勢を低くしていくと姿勢を安定させることが難しくなりますが、ポールの支えさえあれば、アスリートでもきつい姿勢でのストレッチもできます。もちろんポールの支えに頼っていると、筋肉の負荷は弱くなります。高齢になると筋肉運動をしても筋肉が増えにくくなっていきますが、支えがあっても継続していくことで、徐々に筋肉を強化することができるようになります。
こういったポール体操が済んだら、続けて歩くようにします。高齢者に限らず、年齢が進むにつれて歩幅が狭くなっていきます。最近では若者でも歩幅が狭くなる傾向があります。勢いよく足を前に踏み出し、かかとから着地して、足裏を地面に触れさせながら体重を前に移動させていくという歩き方を続けていれば、歩けなくなるということはないはずです。その正しい歩き方を身につけ、継続させてくれるのがポールを用いた四足歩行とも呼ばれるノルディック・ウォークです。
ポールを用いて勢いよく歩くことができるようになると、だんだんと前突きの歩き方では物足らなくなります。そこで前突きの北欧式(アグレッシブスタイル)のポールに持ち替える人も出てきますが、最近の前突きポールは、実は後方に突く歩き方にも対応できるようになっています。
このポールを使った歩き方の最終的な目的は、ポールを使わなくても勢いよく歩くことができるようにすることです。その目的を持ったノルディック・ウォーク、ノルディックウォーキングを、コロナ後に一気に健康度を高めるために活かす方法については次回に考察します。