発達性協調運動障害の改善のための運動を取り入れるときには、ボールや一緒に参加する人たち、身の周りの設備などを認識して身体を動かすために最も重視されるのは視覚です。五感を通じて取り入れる情報のうち視覚からの情報は80〜90%を占めているとされます。具体的には83%という研究成果から87%という研究成果もあるのですが、視覚が87.0%という結果の場合では聴覚7.0%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1.0%となっていたと報告がされています。
それほど重要な視覚からの情報ですが、運動をするときや日常の生活の中での活動では視覚だけに頼るのではなく、聴覚と触覚も使っています。目で見た感覚に耳から聞こえる感覚が加わって、より情報を的確に取り入れることができるようになります。そして、器具や道具に触れた情報を取り入れて、どのように身体を動かすのかを瞬時に判断して、最も安全な方法、最も的確な動きをするように脳から各部位を動かすための情報が発信されます。
キャッチボールでボールを受ける場合には、視覚によってボールの現在の位置と動いていくコース、速度を捉えて手を出すことが重要になります。受けるだけなら、これだけの動きで済みますが、ボールを投げるときには、受け取ったボールを反対側の手で握るように腕と指を動かし、大きさと重さ、表面の性状を手で感じて、それに合わせて、しっかりとつかんで手先や腕だけでなく全身を使って投球することになります。
運動神経が悪いと言われる人は、入手した情報を解析して、それに応じて身体を動かすことが苦手ですが、発達性協調運動障害がある人は視覚に頼りすぎるところがあって、聴覚や触覚を活かせないことから、動きにぎごちなさが現れ、不器用な動きになりがちです。
視覚に頼りすぎた行動は、明るいときにはよくても、薄暗くなってくると視覚からの情報が大きく減るために、急に触覚や聴覚に頼ることになります。普段から使っていない感覚を急に使おうとしても、うまくいかずに平衡感覚が保てず、それが不器用さで済まずに、簡単なはずの動きができない、転ぶ、階段の上り下りができないということにもなります。