集中するために音楽を聴くことがすすめられることがあります。ランニングをするときに音楽を聴くと疲れにくく、長く続けられるということは以前から言われていて、そのメカニズムは解明されています。音楽を聴くことによって気持ちが高められ、苦痛を感じにくくなり、途中で挫折しにくくなります。テンポも大事で、走るスピードと合わせることはないのですが、ペースを保ちやすくなり、途中で挫折しにくいという効果もあげられています。
どんな音楽でもよいということはなくて、心地よいと感じる音楽を聴いているときには脳内でドーパミンが多く放出されます。ドーパミンにはワクワクした喜びの感情も生まれやすく、運動をすることが心地よくなり、その気分を再び感じたくなることから習慣性があります。
これを学習にも活かそうということで、音楽をかけて勉強することをすすめている学習塾もあります。学校では音楽を流せないことから学習塾でということになるのですが、音楽にはマスキング効果があり、周囲の雑音や話し声が遮断されるようになります。雑音が聞こえると学習に集中できなくなり、これがイライラ感を高めることになります。マスキング効果は心地よい情報が脳に届けられると、脳が優先して取り込もうとすることから雑音や話し声がしても気にならなくなっていきます。
これは常識ともなっていることですが、発達障害がある子どもにとっても同じ効果が得られるのかというと、簡単には答えが出せないところがあります。発達障害の感覚過敏のうち聴覚過敏があると、脳が耳から入ってくる音を脳で識別することができにくくなります。通常では脳は耳から入ってきた音のすべてを聞いているわけではなくて、重要と思われる音を選択して聞いています。
騒々しい環境でも、注意すべき警戒音、家族の声、親しみを感じている音が流れると、それを聞き分けられるのは脳の識別機能が働いているからです。その識別機能によって好きな音楽が聞こえると、それ以外の音が遮断されると、音量が小さく感じられるようになります。
しかし、聴覚過敏では聞き分けがしにくく、耳から入ってきた音が脳に取り込まれて、周囲の音が多くなるほど負担が強まるところがあります。対象とする子どもに聴覚過敏があるのか、あった場合でもどの程度の過敏なのかを把握しておく必要があります。それを知ってから、音楽の効果の活用を検討するべきです。