危機的状況に巻き込まれたときに、パニックを起こさず、平常心を保ったままで行動を起こすためには、慣れが大切です。とはいえ、新型コロナウイルス感染症のように、これまでに経験をしたことがない状況に追い込まれた場合には慣れている人はいないので、平常心が保てないままに行動したことが、悪循環を起こしてしまうことにもなりかねません。波が何度も襲ってくるようなことを経験しているので、次の波が起こったとしても問題なく過ごせるのかというと、それに自信をもってYESと言える人は、ごく少数のはずです。
今回のコロナ禍が大したことがないといえるほどの経験をしてきたのは、今では後期高齢者となった戦争体験者です。何も戦争に兵士として参戦した人ということではなくて、戦後の厳しい時代を、子どもであったとしても体験してきた人の危機管理意識には大いに見習うべきところがあります。だから、高齢者の意見を聞くべきだということで、「老いた親に教えられる」という諺(ことわざ)をもじった言葉を今回のテーマとしました。
この元の諺は、「負うた子に教えられる」です。背負っている子どもというのは幼児のことを指していますが、幼児に何を教えられたのかというと、進むべき道です。「負うた子に教えられる」には別バージョンもあって、「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」という諺もマイナーではあっても言い伝えられています。
その意味は、小さな子どもは一人では川を渡れないものの、背中に背負われた状態だと大人よりも目線が高くなり、浅瀬を見つけて、そこを渡るように教えることができるということで、子どもに教えてもらったとおりに川を渡ると深みにはまらずに済む、安全に渡ることができるということを示しています。
コロナ禍と、その後の歩む道を示してくれるような諺ですが、それを使わないで、わざわざ「老いた親に教えられる」をテーマとした理由については次回に続きます。