健康ウォーキング46 糖尿病の運動療法5

日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」の中から運動療法について前回に続いて紹介します。
◎合併症のある糖尿病患者における運動療法
合併症のある糖尿病患者では、運動の強度、量、種類に配慮する必要がある。
心血管疾患のある者やそのリスクが高い場合は、負荷心電図などによる評価が必要である。治療が不十分な増殖網膜症では、高強度の有酸素ならびにレジスタンス運動(収縮期血圧を大幅に上げる)や頭位を下げる運動は眼圧を上げるため、また身体に衝撃の加わる運動は網膜出血のリスクを上げるため、避けるべきである。運動は、糖尿病腎症患者の身体機能とQOLを向上させ、透析患者においても有効である。しかしながら、心血管事故防止などの安全性の観点からは、血圧を高度に上げる(収縮期血圧180〜200mmHg)運動は避けるべきであり、進行した腎機能障害の患者を除いては、有酸素運動を主体とした中等度までの運動が推奨されると思われる。
近年、アルブミン尿を含めた蛋白尿と冠動脈疾患との関連が明らかになっており、運動開始前には心血管疾患の評価を行う必要がある。重篤な末梢神経障害を有する患者では下肢への荷重運動を控える必要があり、水泳やサイクリング、上半身運動などが勧められる。足病変に対してハイリスクの場合にはフットケアが重要である。自律神経障害を有する患者では運動中に血圧低下や上昇を起こしやすく、また運動中に突然死や無症候性心筋梗塞などの合併症を起こす恐れもあるため、慎重に運動療法を進めていく。また、高齢者や肥満者においては腰椎や下肢関節の整形外科的疾患を伴う場合が多く、このような場合、筋力の増強を図るとともに、水中歩行、椅子に座ってできる運動、腰痛体操を勧めるなどの配慮が必要である。