原稿を書くときには文字の使い分けには特に気を使っています。書くほうとしては内容が間違いなく伝わるように使い分けをしているのに、編集の段階で文字が統一されて、間違った内容にされてしまうことがあります。
使い分けの例として頻繁に出てくるのは、たんぱく質とタンパク質です。“たんぱく質”は食品に含まれている蛋白質、“タンパク質”は体内の蛋白質のことで、これは栄養学では厳格に使い分けられています。たんぱく質とタンパク質と使い分けについての説明を入れていたのに、これが編集段階でカットされて、たんぱく質かタンパク質に文字統一されることがあります。
パソコンの文章作成ソフトには文字チェック機能があって、たんぱく質とタンパク質を使っていると、混同していることが表示されます。これは他の文字でも同じなのですが、この文字チェックに引きずられて、著者の意図が反映されないだけでなく、正しく健康情報が伝わらないことにもなります。
物事が満ち足りていて不足がないことを指す言葉として、一般には“十分”が使われますが、数字が出てくる文章の場合には、時間の十分との混同を避けるために“充分”を使うのですが、これも文字統一されて、意味が伝わりにくくなることがあります。ボウル一杯の野菜を食べる意味について書いたときに、先にボール(球)を使う話を書いていたので、これも文字統一に引きずられて“ボール一杯”とされたことがあります。ボウル(bowl)は鉢や椀の意味で、“一杯”はたくさんの意味で使っていたのに、数えるときに一杯と勘違いされたこともあります。
ウォーキングの話のときに、日本ウオーキング協会と書いたら、“日本ウォーキング協会”、ウオーキング大会は“ウォーキング大会”に直されました。日本ウオーキング協会は固有名詞で、その協会が主管するイベントはウオーキング大会です。
余談ですが、“ぎごちない”が正しい日本語なのに“ぎこちない”に、“こんがらかる”が正しい日本語なのに“こんがらがる”と直されるのは、あまりにも当たり前に起こることなので、できるだけ使わないようにしています。