個人的にウォーキングの機会を増やすことを前回は伝えましたが、コロナ禍で大きく低下した地域の健康度を高めるためには、地域での活動も大切になります。地域の健康づくりは自治体の責務ではあっても、「五十歩」の目標が掲げられたら、もう一歩増やすという意識の高まりがないことには、掛け声倒れで終わることにもなりかねません。
ここでは諺(ことわざ)の「五十歩百歩」をもじった「五十歩五十一歩」をテーマとしていますが、“一歩の価値”について紹介させてもらいます。
一般社団法人スマートウエルネスコミュニティ協議会(SWC)の研究発表によると、運動を中心とした健康づくりによって暦年齢が58歳の人の体力年齢が3か月後に65.4歳から60.9歳に4.5歳、若返っていました。健康づくり実施群は対照群(平均年齢70歳)に比べて4年後の医療費は1人当たり約9万円抑制されたとの結果が報告されています。
これまでのSWCの研究成果から歩数増加による医療費抑制への貢献が割り出されています。それによると1歩の価値が0.061円となり、1日に2000歩を増やした場合には1万人が参加すると1年間で4億円以上の抑制になると計算されています。
また、個人の成果では1年間、毎日3000歩ずつ増やすと入院医療費は約21,000円の抑制、通院医療費は約40,500円の抑制になると報告(筑波大学)されています。自治体の高齢者のうち、1000人が1日に歩数を1000歩増やしたとすると、1年間で2000万円を超える医療費が抑制される計算となります。SWCの研究は筑波大学大学院の久野譜也教授が実施したもので、新潟県見附市の健康教室参加者の医療費抑制効果が基本となっています。
このほかに東北大学大学院の辻一郎教授の1日10分間歩行(1000歩)を1か月継続すると1,341円の医療費抑制につながるとの研究成果から1歩あたり0.045円と算定した例や、慶應義塾大学の駒村康平教授の1日あたり歩行量が1歩違うことによる年間の医療費(入院外医療費)との研究成果から1歩あたり0.030円と算定した例もあります。
しかし、SWCで採用され、全国的に実施されて成果が得られていることから、ここでは「1歩あたり0.061円」を採用しています。