ポストコロナ「人は血管とともにオイル」1

“人は血管とともに”という言葉が出たら、それに続くのは“老いる”という言葉がくるのは常識的なところですが、今回のコロナ後を考えるために打ち出したのは“オイル”です。もとの言葉の「人は血管とともに老いる」は、医学教育の基礎を築いたアメリカの内科医のウイリアム・オスラー博士(1849-1919)が残したもので、国内外を問わず多くの医学者が健康の話をするときに引用しています。
血管が老化すると病気にもなり、寿命も短くなる、といった意味で使われていて、だから血管の健康には注意が必要という主張が多くなされています。その注意の多くは脂肪摂取を戒める内容となっているのですが、本当に脂肪がよくないのかということを考えるために「人は血管とともにオイル」というダジャレのようなことを掲げました。
血管といっても動脈もあれば静脈もあり、どこの臓器の血管かということも気になります。そこでオスラー博士の言葉を原典であたってみたら、「A man is as old as his arteries」となっていました。「人は動脈と同じ年齢だ」ということで、これを「人は血管とともに老いる」と訳した人は(誰かはわからないのですが)ある意味で天才かもしれません。「暦の年齢ではなく、血管年齢こそが、その人の年齢だ」ということで、いかに血管の状態をよくしておくかで、寿命の延伸に影響してくるということを示しています。
この場合の血管というのは動脈のことです。心臓から送り出された血液は動脈によって全身に運ばれていくわけですが、動脈には強い力がかかり、丈夫ではあるものの、傷みやすくもなっています。動脈の老化に関わるのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)で、その原因は食事の内容が大きく関係しています。中でも脂肪は血管を傷める大きな要因で、血液検査で中性脂肪値が高いことが確認されたら、脂質摂取を控える食事指導が行われます。しかし、初期段階では自覚症状がほとんどないことから、そのまま放置する人が少なくありません。
新型コロナウイルス感染症の拡大による運動不足、食べ過ぎ、飲み過ぎで血液中の中性脂肪が増えすぎた人も多く、これが動脈硬化の要因となって、今後の血管に関わる心疾患(心臓病)、脳血管疾患につながる危険性を高めているのです。