発達障害の名称は病名にも法律(発達障害者支援法)にも使われており、脳そのものの機能障害であるかのように勘違いされることがあります。しかし、神経の発達が遅れがちであるために、脳の機能に通常とは異なる障害があり、得手・不得手の凸凹(でこぼこ)が起こっている状態です。そのために環境や周囲の人との関わりのミスマッチを招き、対人関係やコミュニケーション、行動や感情のコントロールがうまくできずに、社会生活に困難が生じやすい状態を指しています。
発達障害者支援法では発達障害は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(第2条)と定義されています。ここで明らかにされているのは脳機能の障害であって、脳の障害ではなく、学習障害の場合でも知能の問題ではないとされています。
学習は五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の感覚を用いて行われます。この中で教室内での学習に重要な位置を占めるのが視覚と聴覚で、目で見たものは眼球から視神経を通じて大脳の視覚野と呼ばれる後頭葉に神経伝達が行われます。視覚野で眼球から入ってきた情報が映像化されます。この流れの中で神経伝達の障害があると、見たものが正しく画像化できずに文字がぼやける、二重に見える、ゆがむなどといった状態が起こります。
聴覚では、耳から入ってきた音声情報が聴神経を通じて大脳の側頭葉の聴覚野まで伝達されます。視覚と同様に、この流れの中で神経伝達の障害があると聞き取りにくいというだけでなく、聴覚野で行われている聞き分け、不要な音の減弱が行われずに、すべての音が聞こえて教師の言葉に集中できないということも起こります。
学習障害で起こっている視覚と聴覚の異常(変化)は本人以外にはわからないことであり、本人が感じている困難さだけでなく、それが教師や周囲の子どもに理解されずに進められる学習に強い抵抗感を抱くことがあります。視覚と聴覚の感覚異常があると、成長するにつれて学習の困難さを強め、学習面だけでなく、さまざまな状況において不得手な部分が多くなり、生きにくさを強く感じるようになります。