書字障害は、識字障害があるために起こっているのか、それとも識字障害がないのに書くことにだけ困難さがあるのかによって対応は違ってきます。それなのに、文字がうまく書けないことがわかると繰り返し書く練習をさせて、多くの文字を書くことによって改善させようとすることも見受けられます。文字を認識していて、それを表現するために書こうとしても手指の不器用さから書けないということであれば、繰り返し書かせることでバランスのとれた文字を書くことができることも期待できます。
ところが、文字を正しく認識して、それを書くための動きも理解できていない場合には、繰り返し書かせることでは効果が上がりにくく、そして苦痛を強いることにもなります。学習は書くことによって成果を確認して、解答を出させるという目的があることから、どうしても書くことが注目されがちです。しかし、文字を認識するというインプットに困難さがあり、覚えたことを脳から引き出すことにも困難さがある場合には、文字としてアウトプットすることを求めても、期待どおりの結果とはなりません。
書字障害であることが確認されたら、識字障害があるのかを確認します。識字障害があった場合も、どの程度の状態なのかを知り、その状態に合わせてアウトプットができるようにしていきます。アウトプットの状態に合わせて、識字障害の改善に取り組み、その結果としてアウトプットの内容が変化するのかを見極めて、再び識字障害の改善に取り組むようにしていきます。
このような繰り返しをすることによって、アウトプットだけに時間をかけるという苦痛を強いるような教え方から脱却して、より成果を出しやすくすることができます。