ミニマリストという生き方を選択する人がコロナ禍を経験して増えてきました。ミニマリスト(minimalist)という用語が使われるようになったのは2010年ころからで、持ち物をできるだけ減らして、必要最小限のものだけで暮らす人を指しています。自分にとって本当に必要なものだけを持つことで、かえって豊かに生きられるという考え方で、大量生産・大量消費の社会から脱却して生きていこうという新しいライフスタイルです。
これだけを見ると、なんだか断捨離のように感じるかもしれませんが、使われるようになったのは同時期であって、混同されることがあるものの本当の意味は違っています。断捨離はヨーガの行法である断行、捨行、離行に対応して、新たに手に入りそうな不要なものは断つ、不要なものは捨てる、物への執着から離れるということを意味しています。
メディアでは整理整頓、片付け上手のことに断捨離を使う向きもありますが、そのようなものではないことは元の意味を知ればわかることです。
ミニマリストを名乗っている人の中には、余計な関わりを断って、必要最小限のことしかしないことだと思っているところもあるようですが、余計なことをしないで、そこで生まれた時間と精神的余裕を他の大切なことに使おうというのは、それこそ本来の意味の断捨離との共通点といえます。
「逃げるが勝ち」とばかりに、何もかもを捨てて逃げ出すのは、「逃げるが勝ち」の本来の意味とも違っています。無駄な戦いの場からは引いて、力を溜め、機会を探って、一気に勝利に向かって突き進むのが本来の意味で、それを「逃げるが価値」という言葉を使って、“勝ち”につなげようとしています。