ブドウ糖は脳細胞の唯一のエネルギー源となっていますが、ブドウ糖が動脈硬化の間接的な要因になることを知ると、糖質制限を考える人が増えるようになります。血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンにはブドウ糖を細胞に取り込ませる働きがあるからですが、それと同時に肝臓での脂肪酸合成を進める作用があり、さらに中性脂肪が脂肪細胞の中に取り込まれるのを促進させる作用もあります。
インスリンの分泌は自律神経の働きに影響され、交感神経が盛んに働いているときには分泌量が減り、副交感神経が盛んに働いているときには分泌量が増えます。夕方以降は副交感神経の働きが盛んになっているため、夕食では糖質と脂質の摂りすぎは血液中の中性脂肪とLDLコレステロールを増やすことになるわけです。
それでは動脈硬化を予防して、認知機能の低下を防ぐためにはブドウ糖が含まれる糖質を制限すればよいと考える人も出てきます。血糖は血液中のブドウ糖のことで、ブドウ糖の摂取量が減れば血糖値は下がります。しかし、ブドウ糖を減らしすぎると脳の機能には大きな影響が出てきます。体内でエネルギー源となるのは糖質、脂質、たんぱく質の三大エネルギー源であり、ほとんどの細胞が三大エネルギー源を用いてエネルギー産生を行っています。
ところが、血管から脳細胞に栄養素を通過させる血液脳関門はエネルギー源ではブドウ糖しか通過させることができず、脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源にできません。ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であるため、これが不足するようなことになったら脳細胞が正常に働くことができなくなります。
脳には約140億個の脳細胞があります。そのすべての脳細胞は、それぞれの細胞の中で作り出されたエネルギーしか使うことができないのです。