認知機能を高める特有の成分が使われた健康食品があります。日本では健康食品の成分ですが、海外では医薬品成分として使われているものもあります。
脳血流促進作用がある素材としては、認知機能に関わる海馬などの脳の各器官に運ばれる血液を増やし、認知機能の低下を抑えるものがあり、それに該当する素材はナラタケ菌糸体です。
ナラタケ(楢茸)はハラタケ目シメジ科ナラタケ属に分類される食用キノコです。漢方製剤として用いられているのは中国名では天麻密環菌で、天麻はオニノヤガラ(鬼の矢柄)を指します。オニノヤガラはラン科の多年草で、ナラタケに寄生しています。ナラタケはオニノヤガラの塊茎に寄生しています。お互いに寄生して、栄養成分をやり取りしている関係で、オニノヤガラは滋養豊富で、塊茎(土の中で大きく丸くなった茎で、ジャガイモでは食用部分)を乾燥させたものが漢方素材の天麻となっています。漢方薬(生薬)としての天麻は鎮痙剤、強壮剤のほか麻痺、神経衰弱、頭痛、眩暈の改善などに用いられています。
オニノヤガラと共生するナラタケの菌糸体は、根のように張り巡らされた糸状の菌の集合体で、菌糸体から生まれる子実体が食用となっています。ナラタケは子実体となった後に、オニノヤガラに栄養成分を吸収されることになりますが、その前のオニノヤガラに寄生している菌糸体は子実体を作る前の栄養が最も豊富な状態であり、そのナラタケ菌糸体が漢方の医薬品成分として使われています。中国では医薬品(薬局で販売される第二類医薬品)として使われていますが、健康食品として日本で販売が許可されています。
ナラタケ菌糸体は、骨髄細胞障害を保護する作用と脳の血流、冠状動脈の血流の増進、脳卒中の改善、脳動脈の治療効果、これらの改善効果が組み合わされることによる軽度認知障害の改善効果が実証されています。また、静岡大学による脳保護作用を有する新規成分の発見に続き、大阪医科大学でも機能性と安全性の研究が進められています。