脳の健康寿命34 認知症は超高齢社会の最大の敵

日本人が歴史的に長生きしたことがない事実は全身に影響を与えていますが、脳の機能においても同様のことがいえます。脳の機能というと、物忘れのレベルから重度の認知症まで大きな幅があります。物忘れは忘れたことを覚えているのに対して、認知症となると忘れたという認識もなく、改善するのは困難になっています。例えば、前日の夕食の献立の内容を忘れるのは物忘れですが、夕食を食べたことを覚えていないとなると、これは認知症の症状となります。
脳の機能の老化は、脳細胞そのものと、脳細胞に血液を送り込む血管の両方から見ていく必要があります。脳の神経細胞の数は、生まれたときから20歳くらいまでは約140億個あり、20歳を過ぎると毎日10万個ほどの神経細胞が死んで脱落していくとされています。10万個というと多く感じるかもしれませんが、1年間に3650万個となり380年は保たれるほどの量となっています。脳の重さは男性の場合は1300~1400gで、それよりも女性は100~150g少なくなっています。
高齢者の代表的な疾患である認知症は、年々増え続け、厚生労働省の調査によると2010年の約252万人を基準にすると、2020年には約348万人になり、2035年には約445万人と1.8倍にも増えると予想されています。2005年当時の予測では2020年には約292万人と予測されていたため、予測を上回る勢いで増えていることがわかります。
年齢が進むほど有病率が高まることから、認知症の最大の危険因子は加齢とされています。65~69歳では有病率は1.5%ですが、5歳ごとに倍増して85歳になると27%にも達しています。「認知症こそが超高齢社会の最大の敵」と言われる理由が、ここにあります。
認知症は、記憶障害と、それ以外の認知機能障害が存在していて、社会的な能力や職業上の能力が低下した状態といえます。認知機能障害とは、抽象思考の障害、判断の障害、言葉や動作、ものごとを計画的に立てて行う能力の障害を指しています。