学習支援37 失敗体験を消す行動

学習として板書を書き写すことは通常の教室のシーンですが、学習障害がある子どもでは時間が間に合わずに、書き写している途中で教師が板書を消すこともあります。そんなときには、書き残したところを書き終えている同級生に見せてもらって最後まで書くということになるかと思いますが、そんなときにノートやプリントを破ったり、くしゃくしゃに丸めるということをする発達障害児がいます。
これまで頑張って積み重ねてきたことが完成しなかったことで、もうダメだと絶望を感じて、これまでやってきたことを無にしようとする行動です。絶望ではなくて、失敗したことを消してしまいたいという気持ちの現れということもあります。
発達障害の改善のためには、失敗に引きずられずに、小さなことでもよいので成功体験を積み上げていくことが大切だといわれています。失敗体験になりかねないことを消すために消しゴムで消すだけでなく、破り捨てるのも失敗体験を消す行為です。ところが、そのようなことをしたら、学校の教師にも塾の講師にも叱られるのが通常の結果です。
間違ったら消して書き直す、ということをして、なんとか正解までたどり着けたとします。ところが、正解だと思っていたことが不正解だと言われて、やり直しを命じられると、これは“賽の河原”状態で、非常に苦しいことです。そんな苦しいことを繰り返すなら、破り捨てる行動に出るのも、発達障害の特徴がわかると理解できるようになります。
賽の河原(さいのかわら)は、亡くなった子どもが行くとされる河原で、冥土の手前にあると仏教説話で伝えられていることです。その子どもは河原の小石を積んで塔を作ろうとしますが、完成間近になると地獄の鬼が崩してしまいます。それにめげずに再度積んでいっても、また崩されるということが続くという報われることがない苦行を強いられるわけですが、そこに地蔵菩薩が現れて救済するという地蔵信仰に結びついている説話です。
それと同じように、正解できなかったということで否定をする講師ではなく、救いの手を差し伸べてくれる講師を学習に困難さを抱えている子どもは求めているのです。